早春、新天地に向かった君へ
大根葉干しを始め、干し籠を一つ追加で求めた。
晴れ間から雨模様へ天気が変わると、ベランダから屋内へ。二度目のカゴはサイズが大きめで、室内が手狭に感じる程嵩張る。整理整頓を多少試み、普段開けないタンス内も覗いたり。
其処で、君が残した靴下を見付けた。君用に編んだ手編靴下を忘れるはずがない。爪先から始める編み方で初めて完成させた品。爪先ハギが拙い故、苦肉の策で調べた動画を参考に殆ど自己流で仕上げた。
「手洗い・中性洗剤で洗っても毛100%だから縮んで履けなくなるかもしれない。それなら、此処へ置いた方が…」コノ言葉に従い、残され、タンスに私が仕舞ったはずである。
小春日和のベランダで思い浮かぶのは見送った風景よりも、膝の治療で通院した最終日の、醒める蒼天と眩い陽射し。
今更ながら、心中の決意と覚悟をあの時分かっていたとは思えない。強烈な色と光を焼き付けた君の置き土産が写真みたいに残る丈。
畑に咲いた小さな唐辛子と雪残る畦路
夏真っ盛り頃、唐辛子苗は米茄子のソレと一緒に友人から頂いた。
正直、どちらも育てた事は無く、料理食材としても米茄子は苦手な気持ちがある。堅い表皮を剥く一手間と水気が少ない果肉は、持て余し気味食材。
その一方唐辛子は、漬け物シーズンに使えるから有難いと単純に考えて、枝豆の隣、充分間を取り植え付け。時期遅れの苗植えと肥やしが足りないか、愛情不足かもしれない。大きくはならずに秋を迎える。
手間を掛けない米茄子はそれでテニスボール大を5、6個 もいだだろうか?皮剥きして焼き茄子へ…。秋畝え前、枝豆や丸・長茄子、ピーマン、シシトウと共にありがとう、ゴメンなと云いながら根本から引抜いた。
唐辛子は、畦路近くへ植え替え、大根・白菜・葱の収穫時に引き上げようと思っていたが、作業に追われ置き去り。
晩秋ノ短い昼間、空模様を気にしながら2列の大根を主人が引抜き、へばり付いた泥を葉っぱで落として並べる。傍ら、使い古した米袋に7・8本入れ、ワゴン車前に立て掛ける自分。合間に、白菜根元を包丁で切り 畑脇の草褥へ積む。白菜外葉は虫食いで随分毮った。葱は、4、5日前半分取り込んで残った1列を収穫。家に持ち帰り、白菜は天日干し。大根と葱袋は風除室へ。
主人は、収穫後彼方此方に穴が開いた畝を整えに戻り、朱色の実は忘れられ…。
雨が雪に変わり晴れ渡った或る午後、忘れ物を取りに行きましたら、花が咲いている。細かく朱い実をいっぱい付けた訳知り顔が。
君が向かう先に光あれ!
12月6日の午後1時51分、ローカル線無人駅より君は旅立った。小雨がぱらつく天気だったが、君の行く先には薄日射す晴れ間が覗ける。私達が贈った誕生日プレゼントの背負バッグと布バッグを右手に携えて、1両だけの列車に乗込み、車中人になった。生まれてからずっと暮らしてきた故郷と9年8ヶ月勤務した職場に別れを告げ、都会を目指す。
君の葛藤、息苦しさ、出口が見つからない焦りを想像するしかないが、似た経験はある。遥か昔30年以上も前、未来と親の期待や世間体に押し潰される想いを抱え暮らしていた。過ぎた出来事を忘れてしまうヒトもいるが、あの頃の生き辛さは傷跡と同じで思い出せる。
安定した勤め先、結婚も決まらない。両親の心配と焦燥は伝染し、此方を蝕む。様々試してみるも、上手く行かない。漸く、勤め先安定が叶い、その後結婚相手も見付かったが、極めて幸運だったと思う。
一連ノ流れを振り返ると、コトの成就は順序がある。一足飛びに結論へ辿り着けない。遠廻りは必定。ソノ過程で将来深く係る人達と巡り会い、考え方や感化を受け糧となり…。
君が創る未来は、此処の生き方でない方法も試してみれば良い。臆病風に吹かれないで勇気を出せば、友は君を捜してやって来る。君に幸あれ!君の行く先をいつも光が照らして、笑みが溢れているように!
冬夜の楽しみ
隣町の或る無人駅に恒例のイルミネーションが点灯しました。
四、五年前、噂を聞き、家族で訪れたコトがあります。夜9時を回った時刻、暗く閑散とした駅ホーム中で辺りを賑やかに照らす電飾はほっとする心持ちがして夢中で眺めたましたナァ。付近に住宅街があり、玄関ポーチ周辺を飾り付けた家々を沢山見掛けた。無人駅とセットに思えて、ゆっくり車を走らせた。
今年は、一人で訪れました。相変わらず人の気配が無い其処は、以前より華々しく飾られて…。宵闇が迫る夕暮れ、イルミネーションはやはり目を釘付けにする。
暗闇を照らす小さな電飾集合体は、私達の姿と重なって惹きつけられます。到底太陽光には及ばすとも、夜闇を照らそうと健気に灯り続ける有り様は、ぽっかり勇気を点します。
続 世界は美しいと云うコト
天空に陽ヒカリがあり、ソラとチの間には風と雲が回る。
其のコトワリが完璧に美しいので、目に見えるカタチで具現化していると思います。
太陽の明るさと熱がどれ程有り難いかを長い冬を暮らす北国住人は良く知っています。光が彩を演出し、折々の自然にソレを見ると、神秘的な存在に行き着く。
風が吹き雲が変る様子を観察すると、また同じ想いに辿り着く。
高い空に動く雲が繊細な模様を描く時は、巨大な刷毛を動かし、兆しをあたえるメッセンジャーの姿を…。
ダークサイドは危険!
内容がSF小説から怪奇?モノへ移行してゆく中、変化に馴染めず、新刊を買う頻度が減りました。
おどろおどろしさが濃くなり付いて行けなくなったのです。
同じ頃、筆者あとがきを拝見すると、体調不良・凝りの存在記述が何度もあったように記憶している。 御本人も言及して居られたが、物語がダークサイドへ踏み込むと、カラダが影響を受けるらしい。ストーリー進行上、ダーク面が長く続き、私は停滞と退屈を覚え、シリーズから離れました。
もう一つ、惹かれた続き物は、栗本薫氏「グイン・サーガ」です。英雄・剣・魔道のアイテムに彩られた世界はヨーロッパ中世物語に似て面白いと読み始めた。英雄章は、躍動感があり楽しかった。魔道編に差し掛かると、黒魔道が幅を利かせ、暗黒が厚く物語を覆う。「幻魔大戦」を思い出し、薄ら寒い感じが通り抜け、作者さん身体大丈夫かなと心配した。暗黒章は話が長いし、進まない。ツマラナイと私は感じ、ソノ章は自然と購入無し。物語を進めるのは、周りの幸せを考える者達で、ストーリーが在るべき処に収まる様は読んでいて一番愉しい。
精神を半分暗闇に浸し物語を紡いだ栗本薫氏は、還暦を迎えることなく故人となられ、半村良氏も古希を超えずに逝かれた。偶然とは、思えない。
世にイヅル多くの語り部方と読者の方々にご注意申し上げたい!
精神を暗黒面に近づけると、身体が病んでしまう可能性があると。
すもも酒を作った理由
梅雨の合間、曇り空だった。
車で七、八分郊外に住む伯母から電話がありました。
「すもも、もいだから、取りに来ないか」
喜んでお邪魔したら、伯母は草刈機を動かして畑と果物木周囲を除草していた。
「伯母さんは、機械扱い長けているねえ。除雪機もスイスイ動かすし」
「苦手意識は全然ないねえ。四トントラックも平気で乗り回していたから」
こんな会話をして、ビニール袋大一杯の果実を頂いた。
すももは痛みやすい。熟れ過ぎた実はジャム、未だ青さが残るモノは果実酒。
七月十三日に仕込み、ニヶ月過ぎた。ブランデーとスモモだけのシンプルな組合せ。
只今、ゆっくり熟成中。
仕込んで一ヶ月後、試飲時はブランデー風味が勝っていた。
丁度ニヶ月経った時は、すももの香りと味をほんのり認めた。
三ヶ月後は、どんなハーモニーと成るか楽しみで仕方が無い。