森奥に住む君へ
何故だろう、都会で暮らしているのに 君は雪ノ森奥に居る様に感じてしまう。
誰一人訪ね無い森奥で、頑丈な扉をしっかり閉め ぶ暑い窓ガラスを覗く。仄暗い室内と溶ける鳶色カーテンは用心深さ故か。ストーブ上の湯気立つ薬缶は硝子を曇らせるので、側に腰掛けた君は時折指を滑らせ 視界をくっきりさせる。
屋外、胡桃の木辺りにリスが動き回り、藪から雉が二羽遊ぶ。窓際でキジトラ猫とそれを眺め、薫りくゆるハーブ茶を手に取る。
森と其処に住まう生き物達は、君の世界を護っている存在だろう。狐や狸、梟・鳶・鴉、雉や山鳩、野鼠・リスが家の周りに訪れる筈。熊やイヌワシや猪、猿さえやって来るやもしれぬ。
今は雪で覆われた君の森も、季節が変われば、芽吹く。メブクチカラは、人間には抑え得ない大きな力。止むに止まれぬ源泉から来る。君の名に印されています。
世界は、人間だけのモノではないから人間だけを追い掛けると、見失うよ。袋小路の行き先。
陽光、風音、川流れ、虫乃羽音、人外に答えありと、囁きます。